本州において唯一の日本海側にある競艇場、ボートレース三国。その開設を祝う周年競走、「北陸艇王決戦2023(三国競艇G1)」が始まります。
地元たる福井支部の選手たちにとって、特に思い入れが強いこの一戦。とりわけ近年は、人間ドラマの面からも非常に盛り上がる展開になりました。
2023年で2回目の開催は、どのような劇的な展開が待っているのか。過去5回の結果を振り返るとともに、今回のシリーズを広く展望。優勝候補となりうる選手をピックアップするとともに、「北国の王」を決める三国水面の特性について、ポイントごとに解説していきます。
- 昨年は福井の看板選手によるワンツー決着!北陸艇王決戦の歴史を振り返る
- 今年も福井のスター選手が中心だ!遠征勢にもSGタイトルホルダーがずらり
- 三国の水面は地理的な面白さに満ちる!その特性を知って舟券的中につなげよう
北陸艇王決戦2023(三国競艇G1)の詳細情報
開催年 | 優勝選手 | 所属支部 |
2018年 | 山口 剛 | 広島 |
2019年 | 吉川 元浩 | 兵庫 |
2021年(3月) | 田村 隆信 | 徳島 |
2021年(11月) | 毒島 誠 | 群馬 |
2023年(3月) | 中島 孝平 | 福井 |
過去5回の結果はこのとおり。2018年の山口剛選手は、3号艇3コースからコンマ08スタートでまくりきっての逆転優勝。2019年の吉川元浩選手は、4号艇4コースからコンマ09スタートから同じくまくりで下剋上の優勝。
このように波乱展開が続きましたが、ここ3年は1号艇1コースが順当に逃げ切り勝ち。特に、2021年11月の毒島誠選手はシリーズすべて1着の完全Vという、文句のつけようのない最強の走りを見せてくれました。
また、今年2023年(3月)、今から半年前の開催は地元福井の中島孝平選手がイン逃げ優勝を達成。2着にも今垣光太郎選手が入り、地元が誇る看板選手がホーム水面で躍動したシリーズとなりました。この事実は、今回2023年9月の開催でも大いに参考になりそうです。
狂艇ギャンブラー真里谷のシリーズ展開予想
今年の北の艇王は、果たして誰か。それは先の項目でも示したとおり、地元福井支部の誇る看板選手から見つめることで、シリーズ全体の展望として完成させていきたいものです。
- 福井の誇るレジェンド!今垣光太郎は地元三国で42回目のVを狙う
- 地元周年連覇なるか!?中島孝平がさらなる栄光をめざして走る
- ホワイトシャークがG1戦線に帰ってきた!白井英治が遠征勢でも特に怖い
すなわち、福井から2名、山口から1名という構成になりました。説明不要のビッグネームが3人。そうなると、今回の北陸艇王決戦をベストコンディションで迎えられるかどうか。その点こそが、シリーズを展望するうえでも鍵になるでしょう。選手ごとに、各項目にわけて見ていきます。
シリーズ展開予想①/福井の誇るレジェンド!今垣光太郎は地元三国で42回目のVを狙う
福井の今垣光太郎選手。1969年9月18日生まれで、もうすぐ54歳の誕生日を迎える名選手です。これまで地元の三国水面だけで、41回もの優勝を飾ってきました。そこには2006年、2011年、2015年の北陸艇王決戦が含まれています。今回は同シリーズのV4を懸けた戦いでもあるわけです。
三国の当地成績として、2022年8月1日から2023年7月31日までの30走の算定は、勝率9.17%、2連対率86.67%、3連対率90.00%。揺るがぬ勝利者、とてつもない強さです。それだけに、2節前の「第51回しぶき賞(三国競艇一般)」で準優勝戦3着に終わり、優勝戦に進めなかったことが不思議にさえ思えます。
では、今年の調子が悪いのかというと、まるでそんなことはありません。年明けには早々に「第49回初夢賞(三国競艇一般)」できっちり地元水面V。これを含む優勝3回を計上してきました。
近年の開催振り返りでも触れたとおり、今年3月の北陸艇王決戦(69周年)では優勝戦2着の準優勝。そのポテンシャルの高さは、ますます輝きを増しているかのようです。
前節の「ボートレースメモリアル2023(福岡競艇SG)」では、予選6位通過で準優勝戦2号艇の好枠を得ながらも、悔しくも優勝戦進出を逃してしまいました。それでも、SGで上位を獲れる技量とコンディションが整っているならば、今回の北陸艇王決戦(70周年)もきっとファンの期待に応えてくれるでしょう。
シリーズ展開予想②/地元周年連覇なるか!?中島孝平がさらなる栄光をめざして走る
同じく地元福井の誇るSGタイトルホルダー、中島孝平選手。すでに触れたとおり、前回の北陸艇王決戦、今年3月開催の優勝者です。今垣光太郎選手との地元ワンツーは、福井支部にとってもファンにとっても、何よりの喜びとなった出来事でした。
SGタイトルホルダーと一口に言いましたが、SG2勝のうちの1つは「賞金王決定戦2010(住之江競艇SG)」であったことが、「苦労の人・中島孝平が報われた瞬間」として語り継がれ、また愛されている理由のひとつでもあるでしょう。
今年、中島選手は念願の地元周年Vを成し遂げました。前の項目の今垣選手と同じく、2022年8月1日から2023年7月31日までの30走の当地成績は、勝率9.17、2連対率80.00%、3連対率100.00%です。こちらもまた抜群の力量。69周年記念に続き、70周年記念さえも制する想定が、決して夢物語ではないことがわかります。
ここ3節の結果を見てみると、3節前の「サッポロビールカップ(若松競艇一般)」で優勝戦2着の準優勝、2節前の「第51回しぶき賞(三国競艇一般)」は優勝戦4着、「ボートレースメモリアル2023(福岡競艇SG)」では予選20位でわずかに予選通過ならずでした。
3節前にしても、長崎の原田幸哉選手がトップスタートからの鮮やかな差しを決め、優勝戦1号艇からの悔しい準優勝であったのも事実です。
それでも、ここまで無数の悔しさを背負い、それを晴らすための努力を怠ってこなかったのが中島孝平選手。今年2回目の地元周年において、自他ともに納得する「頂点へ上りつめる」戦いをしてくれるでしょう。
シリーズ展開予想③/ホワイトシャークがG1戦線に帰ってきた!白井英治が遠征勢でも特に怖い
山口の白井英治選手が、関門のホワイトシャークが、G1戦線に帰ってくる!
この一言だけで、今回の北陸艇王決戦の見どころとして成立する。それが白井選手のすごいところです。
もっとも、本当にすごいのは、ここ最近の白井英治選手の実力を改めて証明する成績。昨年8月の「ボートレースメモリアル2022(浜名湖競艇SG)」の優勝戦でフライングを切ってしまったため、周年競走には出られない状態が続いていました。
さて、問題はそこからです。昨年末の「ボートレースグランプリ2022(大村競艇SG)」で史上初の”発祥地グランプリ”を見事に制し、師匠の今村豊さんと歓喜を分かち合ったのは記憶に新しいところですが、その勢いは年明けからもまるで衰えませんでした。
何しろ、2023年1月から8月末までに、一般戦8つとG3競走1つ、合計9つの開催で優勝を成し遂げてきたほどです。グレードレースに出られない弊害で、賞金の積み増し自体はボートレースグランプリ本戦圏外の30位台(3,910万円)ですが、そもそも一般戦を中心にこれだけ稼げるのが驚異的です。
全体での勝率は8.51。同じくビッグレースへ出られない状況が続いていた、佐賀の峰竜太選手の8.59とタメを張る数字となりました。やはりこの2人はすごいと確信するデータでしょう。
その流れでやってしまったのが、3節前の「津インクル開設12数年記念レース(津競艇一般)」でのフライング。10月の「ボートレースダービー2023(蒲郡競艇SG)」はフライング休みによって、出場不可となってしまいました。
ただ、2節前の「Hayashikane杯お盆特選(下関競艇一般)」では、1度の2着以外はオール1着の準完全V。名選手には、さらなる逆境さえもスパイスなのかもしれません。前節の「サッポロビールカップ2023(徳山競艇G3)」でも優勝戦4着と、出来は安定しています。
さあ、こうなると、北陸艇王決戦はますます重要になってきます。年末へ向けて、賞金を積みましできるチャンスがさらに狭まってしまった今、1年ぶりのG1競走での優勝は是が非でもほしいところでしょう。関門海峡から日本海を経て、誰もが愛し恐れるホワイトシャークが襲来する。必見のスペクタクルです。
ボートレース三国の水面特徴
ボートレース三国の水面は、実は先日の「高松宮記念2023(住之江競艇G1)」特集記事で触れた、ボートレース住之江の水面特性に非常に近しいものがあります。
この記事と比較しながら、今回の三国水面の特徴を見てみると、その理解や楽しみがますます広がるでしょう。とはいえ、三国は住之江そのものではありません。ゆえに、三国だからこその特徴について、2つのポイントから迫ります。
- 三国水面の鍵は「風」!三国は整ったコースに荒れる環境要因がミックスされる
- 三国においては内枠艇が基本!1コースが強い一方で波乱になるパターンも見えるデータ
三国の水面特性を確認していくことで、シリーズ全体の楽しみは広がり、舟券戦略は捗るでしょう。ぜひボートレース三国全体の特集記事もあわせてご覧いただき、より楽しいボートレース体験につなげてください。
特徴①/三国水面の鍵は「風」!三国は整ったコースに荒れる環境要因がミックスされる
先にボートレース住之江に似ていると述べたとおり、ボートレース三国の競走水面も見事な長方形のプール型です。水質はもちろん淡水であり、しかも日本海側の立地ゆえに夏は暑く、冬には激しい降雪さえもある。コース形態が優等生なぶん、硬い水質と苛烈な天候が、大きく勝負を左右することが多いと言えるでしょう。
したがって、ボートレース三国の水面は、全24場のなかでは「難水面」として扱われることが多くなっています。これは客観的な材料のみならず、現役の選手たちもよく悩ましいコメントをしているのがポイントです。
特に、水面に影響を与える風。三国の代名詞とも言える冬の北風のみならず、春夏秋も海からの風がしっかり届きます。それでも、インの1コースの成績は決して悪くなく、ほぼ全国平均に近い数字を保っているのは面白いものです。
「広々とした競走水面の走りやすさ」と「苛烈な天候やコンクリート護岸で生まれる波などの走りにくさ」、ボートレースらしい長所と短所が6艇すべての課題となり、結果的に「ボートレースはインコースのほうが物理的に有利」という原則が働きやすいのでしょう。
特徴②/三国においては内枠艇が基本!1コースが強い一方で波乱になるパターンも見えるデータ
端的に言ってしまえば、「春夏秋の三国はわりと概ね問題ない」というのが、データの面からは示されます。「冬の三国」だけはとにかく別格です。冬の北風。水面を這うように選手を襲う雪。これらは、時としてデータをふっとばすような波乱さえ呼び込みます。
今回の北陸艇王決戦は、秋開催な点で本命決着が多めになる見込みです。例えば、ここ3ヶ月(2023年夏季)の1コース1着率は”54.2%”、そこから2着率最良は2コースの”27.0%”で、3着率最良は4コースの”22.4%”でした。一方、4コースは1着率と2着率で苦戦気味であり、3連対率全体では3コースのほうが優秀です。3コース3連対率は”54.9%”、4コース3連対率は”50.1%”でした。
1コースの3連対率は”81.3%”。落ち着いた成績です。1コース進入艇が10回に2回4着以下というのは、およそ番組編成の担当者が理想とする数字に近いでしょう。
さらには、昨年の秋季(2022年9月1日~11月30日)のデータは、よりインコースのほうが強い事実を裏付けます。
進入コース | 1着(%) | 2着(%) | 3着(%) | 4着(%) | 5着(%) | 6着(%) |
1コース | 57.6 | 17.4 | 8.3 | 7.3 | 4.2 | 4.9 |
2コース | 14.1 | 27.8 | 20.5 | 15.6 | 13.0 | 8.6 |
3コース | 14.1 | 23.2 | 19.3 | 19.3 | 14.4 | 9.5 |
4コース | 9.7 | 15.1 | 22.9 | 20.5 | 16.1 | 15.4 |
5コース | 4.8 | 12.4 | 16.6 | 20.4 | 26.5 | 18.9 |
6コース | 1.0 | 5.3 | 13.8 | 18.3 | 26.4 | 34.9 |
すなわち、こういう並びです。1コースの1着率はより高くなりましたし、2コースと3コースも安定していて、時に風などでターンが乱れた1コース艇から1着を奪取するところが見えるでしょう。
また、3着に関してのみ言えば、4コース、5コース、6コースが入り込んでくるパターンも十分ある。そうしたボートレースの原則に忠実なデータです。2コースと3コースがそれぞれ勝負にいって果たせず、展開の恩恵を受けやすい。そうした状況を想定しながら舟券を組み立て、「この選手が3着か!」で悔しい思いをするパターンを減らしたいものです。
北陸艇王決戦2023(三国競艇G1)のまとめ
さあ、秋の北陸の王を決める戦いです。魅力的な出場選手の面々に、秋の三国水面の特性、加えてこの周年競走の特徴をまとめて考えれば、おそらくサプライズに値するような下剋上は起きないのではないか。そのようにも思えます。
しかし、「波乱は多くのファンが予期していないケースとして起こるから波乱なのだ」という事実もまた、あわせて考えていくべきでしょう。そうした思わぬ活躍がまた、誰かを応援する機会にもなります。年末の大一番へ向けて、勝負の秋を迎えるボートレーサーたち。その一戦一戦を、存分に楽しみたいものです。
ボートレース三国のアクセス
住所 | 福井県坂井市三国町池上80-1 |
電話番号 | 0776-77-3131 |
ボートレース三国は、今から70年前の1953年(昭和28年)、当時の坂井郡三国町に三国競艇場として開設しました。
ただ、三国町は規模が小さすぎるために「人口3万人以上」という当時の条件をクリアできず、福井市はすでに福井競輪を開設していて計画参加を断ったため、最終的に三国町から離れた武生市(現・越前市)との協力という紆余曲折を経ての船出でした。しかも、それでも財政面で運営が厳しいため、当時の三国芦原線を運営していた京福電気鉄道にも協力を仰いだ経緯があります(三国芦原線は2003年にえちぜん鉄道へ譲渡)。
その後、京福電気鉄道自体は経営から去りつつも、施設の所有はグループ企業が継続。やがて当初開設していた九頭竜川が一級河川になったため、芦原町(現・あわら市)との境界にまたがる現在地へ移転したという、ボートレース三国は「競艇場そのものにも雄渾な歴史あり」を感じさせてくれる存在になっています。
電車・無料送迎バス・路線バスでのアクセス
ボートレース三国の最寄り駅は、JR北陸本線の「芦原温泉駅」です。現在はあわら市に位置し、一方でかつての芦原町ではなく金津町の中心にあり、それが三国町に最も近い駅という、少し聞いただけでは混乱してしまいそうな実情です。
そうした立地のため、同駅からタクシーで約15分と、まったく徒歩圏の距離ではない点にご留意ください。
一方、今回の北陸艇王決戦が開催される6日間に限り、「JR/芦原温泉駅前」発、「えちぜん鉄道/あわら湯のまち駅前」経由でボートレース三国までを結ぶ、無料送迎バスが運行されます。本数が限られているため、事前に時刻表を確認しておくことが望ましいでしょう。
また、JR芦原温泉駅前から有料の路線バスに乗り、ボートレース三国の最寄りバス停である「三国ボート場口」バス停へ移動するのも有効なアクセス手段です。こちらは京福バスが運行していますが、交通系ICカード導入は来年の予定(2024年3月下旬)のため、利用の際には現金を持参しましょう。
自動車でのアクセス
ボートレース三国の最寄りインターチェンジは、北陸自動車道の「金津IC」です。また、同じく北陸自動車道の「丸岡IC」や「加賀IC」からの一般道走行も選択肢に入るでしょう。金津ICから本場までは、約15分ほどの距離となります。
ボートレース三国には、約2,300台を収容可能な無料駐車場が用意されているのも嬉しいところです。当地は近郊に東尋坊や温泉郷などがあり、それらも含めた観光旅行としての旅打ちも考慮したいものです。