競艇のフライングとルール・ペナルティについて解説!
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競艇のフライングとルール・ペナルティについて解説!

UPDATE:2024.02.07
競艇雑学

スピードに乗って輝く水面を駆ける迫力が魅力の競艇。そんなスピードと迫力が魅力の競艇ですが、スタート方式が独特であり、さらにフライングなどのスタート違反には厳しいペナルティが課せられるという特徴ももっています。

選手は、この特殊なスタートであるフライングスタートをうまく使いこなせれば自身に有利なレース展開にすることができますは、反対に、このルールを守れなかった場合には厳しい処分を与えられてしまいます。

今回は、競艇のスタートに関するルールとペナルティについて解説していきます。

競艇独特の「フライングスタート」の仕組み

フライングスタート

競艇では「フライングスタート」という独特のスタート方式を採用しています。簡単にいうと、競馬などのように一つのスタートラインからヨーイドンでスタートするのではなく、「決められた時間内にレーサーたちがそれぞれのタイミングでスタートラインを超える」という方式なのですが、競艇ではこの独特のスタート方式がレースの行方を左右するほど重要なポイントになっています。まずはフライングスタートについて解説していきましょう。

フライングスタートについて解説

フライングスタートとは、ボートそれぞれがスタートラインの後方から助走を始め、タイミングを計って「1秒間」の間にスタートラインを通過するというスタート方式です。

1秒は短い時間のように感じますが、ボートの時速は70~80kmほどであり、1秒で動ける距離は20mほどあります。選手は競艇場にある「大時計」という1秒を計る時計を確認しながら、この20mの間にスタートラインを通過するようタイミングを計ります。

競艇初心者には難しく感じるスタート方式ですが、これが採用されているのには、水上で行われる競艇ならではの理由があります。というのも、ボートは水面を走るために風や波などの影響を受けてしまいます。動く水面の上でボートを制止させることは難しいため、陸上競技のような一斉スタートはできません。そこで、競艇では時間とスタートラインを定め、各ボートがそれに合わせてスタートラインを超えるという方式を採用しているのです。

地元選手はスタートのタイミングが合わせやすい

時速70~80kmもの速さで航走するボートでタイミングを合わせるのは簡単なことではないので、競艇ではスタートにも選手の実力差が表れます。選手のスタートの上手さを正しく判断することは、競艇で予想を組み立てる際の一つのポイントになります。競艇の予想をするときに注目するべき選手として地元選手が挙げられるのは、慣れているレース場のスタートだとタイミングが合わせやすかったり、水面や気候条件の変化にも臨機応変に対応できるためです。

競艇の2つのスタート違反

スタート違反

競艇の「フライングスタート」という名前を見ると、特に競艇初心者は、早くスタートしてしまう「フライング」と混同してしまうことがありますよね。フライングスタートはあくまでスタートの方式の名前であり、それとは別に競艇にも「フライング」というスタート時のルール違反があるので注意が必要です。
競艇におけるスタート違反「フライング」と「出遅れ」について解説していきましょう。

「フライング」「出遅れ」

競艇におけるフライングは、決められた時間よりも早くにスタートラインを越えてしまった場合のことをいいます。反対に、決められた時間に遅れてしまった場合を「出遅れ」といい、厳しいことにこちらもスタート違反となります。

フライングもしくは出遅れのスタート違反を犯してしまうと、その選手は欠場扱いとなってしまいます。スタート違反を犯した選手が絡む舟券を購入していた場合は、購入金額がそのまま払い戻しされます。

スタート違反のペナルティ内容

フライングや出遅れを犯した選手には、まず「事故点※」が科せられ、そのうえで違反の本数に応じて一定期間レースへ出場できなくなります。

1本目は30日の出場停止、同じ期の間に2本目のフライングをすると60日間の出場停止となります。2本目をすると、1本目の30日間にこの60日間が加算されるため合計で90日間という長い期間の出場停止となります。

更に3本目は90日間が加算、4本目は180日間が加算されますが、「選手出場あっせん保留基準第8号」と選手会による「競走の公正確保及び競技水準の向上化に関する規程」により、1節で「フライング」を4本以上持っている選手は事実上の引退勧告がなされてしまう場合もあります。これを避けるために、フライングをしてしまった選手は、それ以降のレースではスタートに慎重になりますからレース運びもいつもと違うものとなるでしょう。

ちなみに、稀に強風などにより水面状況が著しく悪くなったり、他のボートからの接触などの原因によってやむを得ず出遅れることもあります。その場合には選手責任外と判断されペナルティ対象外となることもありますが、あまり数は多くありません。

※事故点…フライングと選手責任の出遅れが20点(優勝戦の場合は30点)、妨害失格が15点、転覆・落水・沈没・不完走・欠場などの選手責任の失格が10点、不良航法・待機行動違反が2点となっています。事故点の合計を出走回数で割ったものが事故率であり、この数字が数ないほどよく、級別審査機関の事故率が0.70を超えるとB2級となります。

スタート違反のペナルティが厳しい理由

ペナルティが厳しい

競艇のスタート違反に対するペナルティが厳しい理由はいくつかありますが、その中でも特に「開催者・客側双方が不利益を被ること」が大きな理由となっています。選手は競艇のレースを開催している側の人間ですから、選手が起こしたことに対する責任は開催者側がとらなくてはなりません。売り上げにも影響が出ますし、スタート事故を起こした選手が多く所属している競艇場があった場合、もしかするとお客さんからの信頼を失ってしまうかもしれません。

更にスタート違反はせっかく舟券を購入してくれるお客さんにも様々な影響を与えてしまうで、スタート違反には厳しいペナルティが課せられるのです。

スタート事故を起こした艇の分は返還され、オッズが変わってしまう

先述のとおりスタート違反をした艇に関係する舟券は全額返還となりますが、これにより、改めてその分を除いた売上金の中からオッズ※が再計算されることになります。

すると、舟券を購入したお客さんは想定していた的中金額よりも払い戻し金が大きく減ってしまう可能性があるのです。例えば、発売締め切り時点でのオッズが100倍を超えていた大穴がレースで出たとしても、レース着順が確定した後の払戻金ではその半分以下になっていたということも珍しくありません。

また開催側も払い戻しを行う分の売り上げがなくなるため競艇場にも損害が及びます。

※オッズ…自分の買った舟券が的中した場合に支払われる払戻金の倍率のことを言います。例えば、オッズが50.0の舟券を1000円分購入すると、的中した場合に50000円が支払われます。

特に厳しく処罰される「非常識なフライング」

フライングの中でも、0.05秒以上早いフライングのことを「非常識なフライング」と呼びます。この非常識なフライングをやってしまうと「即日帰郷」という重いペナルティが課せられます。即日帰郷とは、その言葉のとおり「荷物をまとめて帰れ!」という処分です。通常、選手はレース期間中は初日から最終日までレースに出走し賞金を稼ぐのですが、即日帰郷となると以降のレースにも参加できなくなるので、選手にとっては大きな痛手となります。

なぜ非常識なフライングが特に厳しく処罰されるのかというと、非常識なフライングは「集団フライングを誘発してしまうから」です。1艇でもスタートが早いボートがいると、どうしても他のボートはそれに引っ張られてスタートが早くなりがちになってしまいます。その1艇がもし非常識なフライングをしてしまうと、それに引っ張られて全てのボートがフライング、なんていう大惨事になりかねません。

もし全てのボートがフライングとなった場合、当然そのレースは中止となります。すると競艇場は1レース分の売り上げが丸々無くなってしまうなど、その影響は非常に大きなものになります。そのため非常識なフライングには特に厳しい処罰が課せられるのです。

前代未聞の惨事!?全艇「非常識なフライング」

2018年2月5日に行われた、宮島競艇場開催の2日目9レースで全艇が0.05秒以上早くスタートしてしまうというレースがありました。

6号艇の「0.19秒」という大幅なフライングにつられ、0.09秒が1艇、0.08秒が1艇、0.05秒が3艇という悲惨なレースとなってしまいました。6艇中5艇以上が「フライング」している場合はレースが不成立となりますから、もちろんこのレースも不成立となりました。さらに、すべてのボートが0.05秒以上の非常識なフライングに該当していたため、このレースに出艇した6選手全員が即日帰郷処分となってしまいました。

「非常識なフライング」の制度が始まったのは2013年11月ですが、全艇が「非常識なフライング」となったのはこれが初めてでした。0.19秒という大幅なフライングもかなり稀なことですが、加えて全艇フライング、それも全てのボートが非常識なフライングという「惨事」になってしまったのは、競艇という競技の厳しさと難しさを如実に表しています。ちなみに、宮島競艇場ではこれに続いて翌日も1艇が「非常識なフライング」で全艇フライングというレースが起こってしまい、ニュースにも取り上げられるほどの出来事となっていました。

まとめ

フライング・出遅れの2つのスタート違反

今回は、競艇のフライングスタートの仕組みとフライング・出遅れの2つのスタート違反、そしてスタート違反に対するペナルティについて解説してきました。

競艇という競技はスピードと迫力が魅力ですが、その分選手は違反を犯すリスクを背負っています。事故点が設けられていることからもわかる通り、注意していても、どんなにベテランの選手であっても起こってしまう可能性があるのです。

競艇選手のスタートに対する適性を見極めることは、予想を組み立てる上で必要不可欠な要素です。出走表や選手の状態をしっかりと確認して、競艇の予想を楽しみましょう。