公営ギャンブルである競艇の世界には様々な厳しいルールがあります。もし選手が重大なルール違反を犯してしまうと「即日帰郷」というペナルティを科せられてしまいます。
これは読んで字のごとく「荷物をまとめてすぐに帰れ!」という厳しいものなのですが、ではどのようなルール違反を犯すと即日帰郷となるのでしょうか?今回は、競艇における即日帰郷について解説していきます。
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目次
競艇におけるペナルティの仕組み
即日帰郷とは、読んで字のごとく「荷物をまとめてすぐに帰れ!」という厳しいペナルティです。賞金を稼いで生活する選手にとっては非常に重いペナルティなのですが、なぜ競艇にはこのような重いペナルティが存在するのでしょうか?まずは、競艇のペナルティが重い理由と、即日帰郷というペナルティの内容について解説していきましょう。
競艇は基本的にペナルティが厳しい!!
まず、競艇においては選手に対して様々なルールが課せられており、ルール違反に対しては厳しいペナルティが与えられます。ペナルティが厳しいことにはいくつかの理由があるのですが、その中でも特に「レースの開催者とお客さんの双方が多大な不利益を被ること」が大きな理由といえるでしょう。
どういうことかと言うと、もし選手がルール違反により出場予定であったレースに出場できなくなった場合、その選手が関与する舟券は全額返還となります。そうなった場合、改めてその分を除いた売上金の中からオッズが再計算されることになります。すると、舟券を購入したお客さんは想定していた的中金額よりも払い戻し金が大きく減ってしまう可能性が生じてしまいます。
また当然、レースの開催者側にとっても舟券の全額返還はそっくりそのまま損失となります。
また、その選手だけが失格となるだけならまだしも、もしレースそのものが不成立となってしまうと、特にレースの開催者側にとっては大きな痛手です。こういったことから、競艇選手にとってはレースに出場することが重要な責務となっているのです。
「即日帰郷」とは
厳しいルールとペナルティが課せられる競艇選手ですが、中でも厳しいペナルティが「即日帰郷」です。
即日帰郷とは、読んで字のごとく「レースが行われる競艇場から帰らされること」を意味します。
より厳密に説明すると、競艇のレース大会は数日間の期間を設けて開催されます。選手はこの間に数回行われる予選レースに参加、そこでの成績により準優勝戦や優勝戦に進出していきます。しかし、万が一後述するルール違反を犯してしまうと、当該レースへの出場契約を解除され、その日のうちに競艇場を後にしなければならなくなります。これが「即日帰郷」です。
競艇においては、予選レースや準優勝戦、優勝戦に出場するとレースの着順に応じた賞金が選手に支払われます。賞金は最下位の6着でも支払われるために「レースに出場すること」は選手にとって重要な責務であると同時に生活に直結する死活問題ともなっています。それをレース大会の途中で帰されることは、それだけでも非常に重いペナルティといえるのです。
即日帰郷よりも重大なペナルティ「即刻帰郷」
「即日帰郷」は比較的有名な言葉なので競艇初心者のファンでも聞いたことがあるかもしれませんが、競艇の世界にはより重大な「即刻帰郷」というペナルティもあります。
これも詳しく説明すると、即日帰郷は原則として、その日のレース日程が終了後に発動されるペナルティなので、例えばその日に2本レースを走る予定で、1本目のレースで即日帰郷のペナルティを受けても、2本目のレースには出場することができます。しかし、即刻帰郷の場合には文字通りその時点で帰らされてしまうのです。
「即日帰郷」の語源は旧日本軍!?
即日帰郷の語源は、旧日本軍にあるといわれています。かつて旧日本軍があった頃は、男子は満20歳の誕生日以降に徴兵検査を受けることになっており、そこで入隊するか否かが決定されていました。この徴兵検査で不合格となるとその日のうちに帰らされるのですが、このことが即日帰郷と呼ばれており、これが転じて公営ギャンブルでも使われる言葉となった、といわれています。
スタートにおけるルール違反による即刻帰郷
競艇において即日帰郷といえば、スタート違反による即日帰郷が目にする機会が多いです。というのも、競艇のスタート方式はやや独特であり、スタート違反が起きやすいためです。まずは、競艇独特のスタート方式と2つのスタート違反について説明するとともに、スタート違反による即日帰郷について解説していきましょう。
競艇独特のスタート方式「フライングスタート」
競艇では、「フライングスタート」という独特のスタート方式が採用されています。これは、それぞれのボートがスタートラインの後方から助走を始め、タイミングを計って「1秒間」の間にスタートラインを通過するというスタート方式です。1秒は短い時間のように感じますが、ボートの時速は70~80kmほどであり、1秒で動ける距離は20mほどあります。選手は競艇場にある「大時計」という1秒を計る時計を確認しながら、この20mの間にスタートラインを通過するようタイミングを計ります。
競艇の2つのスタート違反「フライング」「出遅れ」
競艇におけるフライングは、決められた時間よりも早くにスタートラインを越えてしまった場合のことをいいます。逆に、決められた時間に遅れてしまった場合を「出遅れ」といい、厳しいことにこちらもスタート違反となります。
スタート違反で「即日帰郷」となる場合
フライングの中でも、0.05秒以上早いフライングのことを「非常識なフライング」と呼びます。この非常識なフライングをやってしまうと「即日帰郷」が科せられます。
なぜ非常識なフライングが特に厳しく処罰されるのかというと、非常識なフライングは「集団フライングを誘発してしまうから」です。1艇でもスタートが早いボートがいると、どうしても他のボートはそれにつられてスタートが早くなりがちになってしまいます。場合によっては全てのボートがフライング、なんていう大惨事になりかねません。
もし全てのボートがフライングとなった場合、当然そのレースは中止となります。先述のとおり競艇場は1レース分の売り上げが丸々無くなってしまうなど、その影響は非常に大きなものになります。そのため非常識なフライングには特に厳しい処罰が課せられるのです。
前代未聞の惨事!?全艇「非常識なフライング」で即日帰郷!
「【宮島】競艇で大珍事!全艇フライングも全艇非常識なフライング⁉」⇒https://www.youtube.com/watch?v=geVKxWp883g
2018年2月5日に行われた、宮島競艇場開催の2日目9レースで全艇が0.05秒以上早くスタートしてしまうというレースがありました。
6号艇の「0.19秒」という大幅なフライングにつられ、0.09秒が1艇、0.08秒が1艇、0.05秒が3艇という悲惨なレースとなってしまいました。6艇中5艇以上が「フライング」している場合はレースが不成立となりますから、もちろんこのレースも不成立となりました。さらに、すべてのボートが0.05秒以上の非常識なフライングに該当していたため、このレースに出艇した6選手全員が即日帰郷処分。
さらに、宮島競艇場ではこれに続いて翌日も1艇が「非常識なフライング」で全艇フライングというレースが起こってしまい、ニュースにも取り上げられるほどの出来事となりました。
前日検査における即刻帰郷
スタート違反と同じく即日帰郷の原因となってしまうのが「前日検査における違反」です。
競艇では、レース大会初日の前日に、健康診断、モーター抽選、試運転、スタート練習などを行います。これを「前日検査」といい、ここでルール違反を犯してしまうと、即日帰郷の処分を下されてしまうことがあるのです。説明していきましょう。
体調不良
健康診断の際に、規定値以上の体調不良と判断されると、その時点で即日帰郷となることがあります(選手に責任がない場合は「欠場」となりこの場合はペナルティはない)。
厳しいようですが、公営ギャンブルにおいてはこれまでご説明してきたとおり「レースに出場すること」も選手の重要な責務であり、体調管理も選手の仕事のひとつです。また、競艇は事故を起こすと命に関わる危険な競技ですから、体調に問題のある選手をレースに出さないことは、選手の命を守る意味もあります。
選手登録票不携帯
競艇選手には、一般自動車の運転免許証に該当する「選手登録票」というものが与えられます。これは競艇選手であることを証明する重要なものであり、これを前日検査の際に呈示しないと「選手登録票不携帯」として不合格となってしまいます。選手登録票不携帯は選手の怠慢と見られますから、基本的には即日帰郷とされてしまいます。
遅参
前日検査は、レース開催日前日の昼12時までにレースが行われる競艇場にて受付と物品検査を済ませる必要があります。これにもし遅れてしまった場合には「遅参」といいペナルティの対象となります。
遅参には様々な事情があるため、例えば交通機関の乱れなど選手の責任によらない場合はペナルティが軽くなったりします。しかし、例えば寝坊してしまったなど選手自身に責任がある場合は、即日帰郷などの重いペナルティが科せられます。
まとめ
今回は、競艇における厳しいペナルティ「即日帰郷」について解説していきました。即日帰郷が科せられるのは、主にスタート違反と前日検査における違反の2つです。これらのルール違反は、レースを開催する競艇場とレースを楽しみにしているお客さんに大きな影響を与えてしまうものなので、厳しいペナルティが科せられているのです。
ちなみに、選手のルール違反やペナルティといった情報は競艇の公式サイト「BOAT RACE」などで見ることができます。競艇で予想を組み立てる際にはあまり影響がないと捉えるファンもいるのですが、ルールをしっかり守ることも選手の能力というファンもいます。競艇初心者のファンは一度、選手のペナルティについて調べてみるとよいでしょう。