「やった!万舟券が当たって稼げたぞ!」競艇ファンにとってはたまらない展開ですが、ちょっとまってください。あなたは、競艇の払戻金にかかる「税金」をきちんと申告していますか?
競艇の払戻金には税金がしっかりとかかります。そこで今回は、どのような税金がかかるのか、どのような計算方法なのか、丁寧に解説していきます。申告漏れがもしバレてしまった場合には、手痛いペナルティもありますから、しっかりと「税金」の確定申告に向き合いましょう!
目次
競艇の払戻金には税金がかかる!
まず結論からいうと、競艇の払戻金には税金がかかります。しかし、会社からもらうお給料やボーナスなどとは違い、税務署は競艇ファンの払戻金を把握できているわけではないので、自ら「いくら使って、いくら儲かりました」ということを申告して税金を納めなければいけません。まずは、競艇の払戻金にかかる税金の仕組みについて解説していきましょう。
競艇の払戻金は通常「一時所得」と見なされる
競艇ファンが普通に楽しむような舟券の買い方であれば、払戻金として得た所得は税法上「一時所得」と見なされます。一時所得とは「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得」のことを言い、競艇も含めた公営ギャンブルの払戻金の他にも、懸賞や福引きなどによる賞金品、あるいは生命保険の一時金などが該当します。ちなみに、宝くじの賞金についてのみ、法律により「非課税」と定められているので、所得税はかかりません。
「一時所得」として見なす場合の税額の計算方法
通常、会社員などが会社からもらうお給料やボーナスなどの所得には「所得税」という税金がかかります。しかし、会社が所得金額等を計算して従業員に代わって納税をしてくれますから、従業員が税金について計算をしたり支払ったりの手続きをすることはありません。
しかし、「一時所得」については受け取った本人しか金額などを把握できないために、自ら「いくらお金が入りました」と申告し、お給料などの他の所得と合わせて所得税を計算しなければなりません。これを「確定申告」といいます。
詳しくはこの後にご説明する計算方法の中で触れますが、競艇の払戻金を「一時所得」とする場合には、年間で50万円以上の利益を得たときのみ税金がかかるので、確定申告が必要となります。
「一時所得」にかかる税金の計算方法は、以下のような手順で算出されます。
① 「一時所得」の金額を算出:総収入金額ー収入を得るために支出した金額ー特別控除額(最高50万円)
② ①で算出した「一時所得」の金額の1/2に相当する金額を、お給料などの他の所得に足す
③ ②で算出した総所得金額に、所定の所得税率がかけられて納めるべき税金額を計算する
続いて、一時所得にかかる税金を計算する際のポイントについて解説していきましょう。
「一時所得」は年間を通しての金額で算出する
一時所得にかかる税金を計算する際に重要なのが、①の数式にある「総収入金額ー収入を得るために支出した金額」という部分。所得税の課税対象は年間を通しての金額なので、「総収入金額」とは競艇で得たすべての払戻金の合計額、そして「収入を得るために支出した金額」とは、払戻金を得たすべての舟券(=的中した舟券)の購入金額の合計額となります。つまり、舟券を購入する機会が100回あったとしたら、その100回分を合算して確定申告する必要がある、ということです。
「一時所得」の場合、ハズレ舟券は経費に算入できない
「ハズレの舟券の購入金額は経費に算入できないのか?」ということを疑問に思われる競艇ファンもいるかもしれません。しかし、「一時所得」として確定申告する場合には、ハズレ舟券の購入金額は「収入を得るために支出した金額」には該当しません。「一時所得」として考える場合には、あくまで的中した舟券の購入金額のみが、いわゆる経費として認められる、という点に注意しましょう。
「一時所得」の場合、50万円までは税金がかからない
「一時所得」にかかる税金を計算する際には「特別控除額」も見逃してはいけないポイントです。「一時所得」の場合、50万円を特別控除として差っ引くことができます。これはつまり、利益が50万円までであれば税金がかからないということであり、すなわち確定申告の必要がなくなる、ということです。
競艇の払戻金が「雑所得」に当てはまる可能性がある
先ほどまでは「競艇ファンが普通に楽しむような舟券の買い方であれば、払戻金として得た所得は税法上「一時所得」と見なされる」旨の説明をしてきました。しかし、競艇の払戻金も購入方法などによっては「一時所得」ではなく「雑所得」に当てはまる可能性があります。
競艇の払戻金が「雑所得」と見なされる条件
競艇を含めた公営ギャンブルにおいては、払戻金を「雑所得」として確定申告した方が納税額が安くなることがあります。そのため、人によっては「一時所得」ではなく「雑所得」として申告しようと考えるファンもいます。
ただし、国税庁のホームページを見ると、同じ公営ギャンブルである競馬の払戻金については、以下の場合に該当しないと雑所得としては考えられない、としています。
ここで重要なのは、「営利目的の継続性」が認められるか否か、です。つまり、たまたま購入した舟券が的中した場合の払戻金については「雑所得」としては当然認められませんし、ある程度継続して購入したり、購入金額が大きかったとしても、それがビジネスであるとして国税庁あるいは裁判所に認められなければ、やはり「雑所得」ではなく「一時所得」と見なされます。
「雑所得」として見なす場合の税額の計算方法
「雑所得」にかかる税金の計算方法は、以下のような手順で算出されます。
① 「雑所得」の金額を算出:総収入金額ー必要経費
② ①で算出した「雑所得」の金額に相当する金額を、お給料などの他の所得に足す
③ ②で算出した総所得金額に、所定の所得税率がかけられて納めるべき税金額を計算する
「一時所得」と「雑所得」との違い
競艇の舟券の払戻金を「一時所得」と見なすか「雑所得」と見なすかで、何が違うのでしょうか?それは「雑所得」の場合の税額の計算方法を見ればよく分かります。
大きく異なるのは、雑所得とすることでハズレ舟券も経費に含めることができる、という点です。先述のとおり、払戻金にかかる税金を「一時所得」として確定申告する際、経費として算入できるのは的中した舟券にかかった金額のみでした。それが「雑所得」と見なすことで、ハズレ舟券も経費に含めることができるようになります。これにより最終的に支払うべき税金額を小さくすることができるのです。
ただし、「雑所得」として確定申告する場合には、「一時所得」の場合に適用される50万円の「特別控除」がなくなり、純粋に払戻金から舟券の購入費用をひいた金額に税率がかかることになります。
「雑所得」として認められる例が出てきた経緯
元々は競艇も含めた公営ギャンブルの払戻金は「一時所得」としてしか認められてこなかったのが、なぜ「雑所得」として認められる例が出てきたのでしょうか。
近年、パソコンでリターンの確率が最大となるような購入方法を割り出すプログラムを組み、大規模な量の組み合わせの馬券を自動的に購入して大きな利益を出すような競馬ファンが出現してきました。この購入方法は、とにかく手数を広げて的中率を上げるという考え方で成り立っているので、払戻金が大きくなる一方で、必然的にハズレ馬券にかかる金額も大きくなります。
しかし、当初はそういったやり方であっても、先述のとおり払戻金は「一時所得」であり、経費として認められるのはあくまで的中した馬券にかかったお金のみ、と判断されてきました。それではプログラムによる馬券購入により稼いできた競馬ファンは困ってしまいます。ハズレ馬券が経費に算入できないとなると、せっかく大きな利益を稼ぎ出したのに、支払うべき税金の額も大きくなってしまうからです。
それに対して、とある競馬ファンが異議をとなえて裁判にまで持ち込み、最終的には競馬ファンの異議が認められるという結果に。これにより、それ以降は上記のような条件により「営利目的の継続性」が認められる場合にのみ「一時所得」ではなく「雑所得」と見なされ、ハズレ馬券も経費として算入できることが認められるようになった、というわけです。
基本的には舟券の払戻金は「一時所得」として申告すべき
例外的に「雑所得」として認められることもあるとはいえ、やはり基本的には舟券の払戻金は「一時所得」として確定申告すべきでしょう。
なぜなら、先述のとおり「雑所得」として認められる条件はかなり限定されているために、もし「雑所得」として確定申告した場合、税務署などより説明が求められたり、あるいは「雑所得」として認められずに追徴課税が発生する可能性があるからです。
もちろん、これまで認められてきた事例をマネしてやれば「雑所得」として認めてもらえる可能性はありますが、最終的に判断するのは裁判所です。事実、とある競艇ファンが自分の払戻金を雑所得であると申告、認められなかったために裁判に持ち込んだものの、棄却されてしまった事例も存在します。こうなると本来の税金以上に裁判費用まで支払う必要が生じるために大きなマイナスとなってしまい、目も当てられません。
不要なリスクを避けるためにも、あくまで舟券の払戻金は「一時所得」であると考えておくと良いでしょう。
まとめ
今回は、競艇の払戻金にかかる税金について解説してきました。まとめると、競艇の払戻金は基本的には「一時所得」として見なされますから、50万円以上利益が出ている場合には、きちんと確定申告をすべき、といえるでしょう。
もちろん、申告をしないからといって、すぐにバレて追徴課税されてしまう、ということは現実的にはあまりないと言えます。とはいえ、もしバレてしまった場合には本来支払うべき税金よりも大きい金額を支払わなければいけません。そのことを念頭において、確定申告に向き合ってみてはいかがでしょうか。