全24場のなかでも特別な存在だからこそ、ボートレース住之江では1年に複数回のビッグレースが開催されます。年末の「ボートレースグランプリ2023(住之江競艇SG)」だけではないことを示す戦い、「高松宮記念2023(住之江競艇G1)」の始まりです。
ボートレース界には珍しい、開催箇所固定の名物グレードレース。「競艇の聖地」にして「ボートレースの聖地」たる住之江で、今年も楽しみなシリーズになるでしょう。
この記事の表題にもし、またすぐに解説も行うとおり、ここ2年は地元大阪の太田和美選手が連覇を達成しています。太田選手は今年も出場を予定しており、歴史に残る3連覇を達成するのかが注目されるところ。シリーズ詳細の解説、今年の展望、さらには舟券予想に役立つ内容までを網羅しました。存分にご堪能ください。
- 最強大阪支部が進撃する!近年だけでも高松宮記念でめちゃ強い大阪のレジェンドたち
- 太田和美の3連覇なるか!?同じ大阪の石野貴之に加え、今年G1優勝2回を重ねた毒島誠も手強いぞ
- 住之江水面こそ最強を決めるにふさわしい水面!総合力の高いその特性と特徴を解説
高松宮記念2023(住之江競艇G1)の詳細情報
開催年 | 優勝選手 | 所属支部 |
2018年 | 濱野谷 憲吾 | 東京 |
2019年 | 石野 貴之 | 大阪 |
2020年 | 原田 幸哉 | 長崎 |
2021年 | 太田 和美 | 大阪 |
2022年 | 太田 和美 | 大阪 |
過去5回の高松宮記念の結果は上記のとおり。すでにお伝えしているとおり、ここ2回は地元大阪の太田和美選手がいずれもイン逃げで連覇を飾っており、同一競走3連覇の偉業を目指す戦いになります。
それにしても、大阪支部勢がとことん強いのがこのシリーズ。過去2年のみならず、4年前にも石野貴之選手が優勝。さらに、過去10年に広げてみると、2013年には湯川浩司選手が、2015年には田中信一郎選手が栄冠を手にしているので、10回のうち5回は大阪勢が優勝していることになります。
昨年、2022年の優勝戦にいたっては、6艇のうち4艇が大阪支部というすごい状態。結果、1号艇の太田和美選手が優勝し、6号艇の丸岡正典選手が大外から健闘して2着。3着には”王者”こと松井繁選手が入り、確定板を大阪支部が独占することとなりました。
また、後段の水面特性の項目で触れるとおり、住之江ではインが強い傾向にあります。グレードレースではいよいよインが崩れにくい傾向が高まりますが、さて、このシリーズの優勝戦はどうだったのでしょうか。
実は、過去10年で3回、インが敗れています。2014年には、群馬の山崎智也選手が5号艇5コースからのまくり差し。この時の1号艇は三重の井口佳典選手でした。2017年は広島の吉田拡郎選手が6号艇6コースから恵まれによる勝利。1号艇は大阪の岡村仁選手でしたが、コンマ03痛恨の優勝戦フライングでした。
さらに、3年前。2020年は、長崎の原田幸哉選手が3号艇3コースから絶品のまくり差し。語り草とも言える逆転優勝を成し遂げています。この時も、1号艇は大阪の湯川浩司選手でした。
こう見ると、ほぼ数字上の確率どおりに、優勝戦も推移していると言えます。ただ、それ以上に、どの年も大阪支部が優勝戦まで絡みまくっているのが驚き。今年の高松宮記念でも、地元大阪のベテランから若手まで、隙のない面々に注目していきましょう。
狂艇ギャンブラー真里谷のシリーズ展開予想
先の項目でも書いたとおり、高松宮記念は大阪支部が強い。これは2023年も変わらないであろう、というのが基本線です。今シリーズの展開も大阪支部を基本線として、注目選手を検討しました。
- めざせ3連覇の大偉業!太田和美のさらなる快挙の是非に注目だ
- 再び最強最高の輝きへ!石野貴之は賞金ランキング上位確定の快進撃
- 住之江の夜に帝王が降臨!毒島誠がグランプリへ向けて劇勝を欲する
大阪2人に、遠征勢から群馬を1人。大阪支部が強いとはいえ、それを打ち砕くことのできる名選手がズラリとそろったのも事実です。その中でも、とりわけ毒島選手が活躍に期待したい要素に満ちていたため、悩みながらもチョイスしました。
勝利。尊くも手に入れ難きその栄光に、ぜひとも手を伸ばしてほしい、また十分に手が届くであろうレーサーたち。各項目ごとに分けて、1人ずつ確認していきます。
シリーズ展開予想①/めざせ3連覇の大偉業!太田和美のさらなる快挙の是非に注目だ
昨年の太田和美選手の同一競走2連覇。これはモーター抽選制という強烈な不確定要素があるボートレースにおいて、そうそう成し得ることのできない快挙でした。もちろん、まるで起こらないとは言いません。しかしながら、非常に達成困難な偉業なのは確かです。
それでも、太田選手はやってのけました。2年連続の優勝戦1号艇からの、これまた2年連続での堂々たるイン逃げ優勝。SG優勝7回を誇る偉大なベテランは、「高松宮記念2022(住之江競艇G1)」での勝利が5年連続でのG1優勝となりました。
ですが、今年。そのG1連続優勝の記録どころか、一般戦を含めてまだ一度も優勝していません。2月に「第25回日本財団会長杯争奪戦競走(常滑競艇一般)」の優勝戦1号艇でコンマ01のフライングをしてしまったのが、あるいは想像以上の傷となって響いているのかもしれない。そうした憶測さえしてしまいます。
太田和美選手は、高松宮記念を通算で6回も制している驚くべき事実。あらためて考えてみても、とんでもない記録です。そうは言っても、果たして”V7″にするだけのポテンシャルが戻っているのでしょうか。
いえ、その疑いすらも野暮かもしれません。太田和美選手が高松宮記念を制したのは、2001年、2005年、2006年、2009年、2021年、2022年と広い期間に渡ってのものです。走り続ける限り、優勝の可能性はある。ましてや、これほどの名選手ともなれば、得意の舞台で再び栄光に近づくかもしれない。
6日間、彼の戦いを見届けたい。2023年開催の高松宮記念、そのメイントピックとして、太田和美選手の存在は欠かせません。
シリーズ展開予想②/再び最強最高の輝きへ!石野貴之は賞金ランキング上位確定の快進撃
2023年8月27日時点での獲得賞金ランキング、堂々の第2位。数年前の不調が嘘のような活躍を続けているのが、大阪の石野貴之選手です。今節は松井繁選手や田中信一郎選手など、同じ大阪支部から期待の高まる存在はわんさか出ていますが、やはり今年の充実度を考えれば石野選手を取り上げるのが妥当でしょう。
実際、初日ドリーム戦「高松宮特選」は絶対的な王者たる松井繁選手が1号艇を担う一方、2日目ドリーム戦「ジャンピー特選」の1号艇はこの石野選手が務めます。間違いなく、今開催の主役の1人です。
前節の「ボートレースメモリアル2023(福岡競艇SG)」は、残念ながら予選敗退となってしまいました。モーターとの相性や調整が上手くいかなかったのか、イン戦を含めて大きな着を複数叩いたのが響いた形。この開催で見事に1号艇逃げ切り優勝を飾った滋賀の馬場貴也選手に、賞金ランキング第1位の座を明け渡す形になりました。
3節前の「全国ボートレース甲子園2023(尼崎競艇G2)」で右肩ねんざを発症し、途中帰郷。これが大きなコンディション低下の要因になっているかもしれません。2節前の「オーシャンカップ2023(児島競艇SG)」も、前節と同じく予選突破を果たせませんでした。
無論にして予選を突破できるのは選ばれた18名だけであり、ましてSG開催ともなれば、それだけでもすごいことです。ただ、石野選手ほどの存在ともなると、「おやっ」と思ってしまうのは人情でしょう。
ただ、すべてが杞憂に終わる可能性、すなわち「やっぱり石野貴之って超強いじゃん!」な結末になる可能性も提示しておきましょう。つまり、今回が住之江開催であるという事実です。
石野貴之選手は、ホーム水面である住之江を大の得意としています。117節参戦、51回優出、19回優勝。2011年には周年競走である「太閤賞2011(住之江競艇G1)」を制覇。そして、最も華々しい活躍をした2019年には、「ボートレースグランプリ2019(住之江競艇SG)」でイン逃げを成功させました。
かのグランプリ優勝戦。2号艇の桐生順平選手に舳先をかけられつつも、すぐれた技量でこれを退けての頂上決戦制覇でした。「賞金王決定戦の勝利者」という至上の称号と賞金1億円を手にしたのみならず、唯一無二の「令和初めての賞金王」のおまけつき。これぞ”歴史”です。今回、新たな歴史の扉を押し開く。それが可能な実力が、石野選手にはあります。
シリーズ展開予想③/住之江の夜に帝王が降臨!毒島誠がグランプリへ向けて劇勝を欲する
「やっぱり強いなあ」
そう思わせてくれる場面が多い選手というのは、実際に高い操縦技術と整備技術を持っているものです。群馬の毒島誠選手もまた、そうしたカテゴリに当てはめるのに適したトップレーサーでしょう。
前節の「ボートレースメモリアル2023(福岡競艇SG)」については、当サイトに掲載の特集記事で、活躍が期待できる選手の1人としてピックアップしていました。
上記の内容どおり、優勝した馬場貴也選手(予選3位通過)、羽野直也選手(予選9位通過)とあわせ、毒島誠選手(予選13位通過)を選べたのは喜ばしいことです。毒島選手は準優勝戦で5号艇5コースからの3着。優出こそならなかったものの、2連対率28.24%という”しんどい数字”の51号機が相棒となったのを考えれば、よくやった結果なのではないでしょうか。
あちらの記事でも触れたとおり、直近の「BTS岡山わけ開設2周年記念競走(児島競艇一般)」と「第57回報知新聞社杯 お盆レース(桐生競艇一般)」では2節連続優勝を達成。卓抜した技量に、コンディションの良さが伴っていることは、メモリアルでも十分に示してくれました。
住之江水面でのビッグレース制覇経験はありませんが、25節参戦して13回優出および2回優勝という優秀な数字があります。しかも、今回は毒島選手が得意にしているナイター開催。大阪勢を倒す期待をするのなら、まずもって彼の働きに注目していくべきでしょう。
ボートレース住之江の水面特徴
端的に言ってしまえば、住之江はごまかしが効かない水面です。難易度が低いわけではなく、一方で思わぬ要因で波乱が起きる要素も少なく、高く安定した実力を持った選手がきっちり勝ち切る、あるいは3連対を果たす。そういうコースなのです。
- 「聖地」住之江は王を育てる淡水水面!ボートレーサーの真価が試される
- カッチカチやぞ!住之江水面の基本は人気サイドと考えつつも「大波乱」注意
では、実際のところ、ボートレース住之江の水面はどういった特性、および際立った特徴を有しているのか。当サイトで公開している以下の記事とあわせてお読みいただきながら、今回の高松宮記念に思いを馳せ、さらには今後も使える知識として存分にお楽しみください。
特徴①/「聖地」住之江は王を育てる淡水水面!ボートレーサーの真価が試される
住之江の水質は淡水です。セオリーどおり、淡水は硬くてよく跳ねる。海水よりも浮力が小さいために、ボートが不安定になりやすい特徴を持ちます。住之江の淡水は多くが雨水でまかなわれていて、足りない分は工業用水で補うことで、常に最適な競走水面が保たれています。
加えて、コース設計を見てもらえればわかるとおり、住之江は理想的なまでの「プール型水面」を成しています。これ以上ないくらいきっちりと長方形で、全24場でも数えるほどしかないマイノリティのグループに入るでしょう。
住之江のプール水面は、周囲がコンクリート製の護岸で覆われています。その点で、同じプール型水面でそこそこ整えられた場所として、ボートレース唐津の水面とは明確な違いがあると言えるでしょう。
唐津水面は周囲が葦などの自然物で覆われているため、ボートが起こした波を吸収してくれる特性がありました。逆に、住之江のように護岸で固められている場合、波がきれいに跳ね返るため、6艇がつくった波が残る傾向にあります。
こうなると起きやすくなるのが、残り続けた引き波に飲まれての失速です。こうした波は特にターンの際に”運命をもてあそぶ女神”となり、ドラマティックな展開を用意してくれるものです。多くの舟券ファンにとっては、ありがた迷惑でしょうけれど……。
一般戦ではこうした波でターンが流れたり、ド派手にキャビテーションを起こして逆転劇につながってしまうこともあります。G1競走ではそうした機会は珍しくなるものの、人間はミスをする生き物です。よほどモーターの出力が低かったり、選手の競走スタイルと合わなかったりすると、万舟券登場チャンスになるでしょう。
特徴②/カッチカチやぞ!住之江水面の基本は人気サイドと考えつつも「大波乱」注意
続けて、数字面を中心に見ていきましょう。最初に覚えておきたいのは、「住之江は総合的にインが強いけど、荒れる時はがっつり荒れるから、平均配当はむしろ全国平均よりも高いよ」という事実です。
先の1つ目の特徴で「実力ある選手が勝つ」というスタンスで解説しましたが、それも開催によっては”万舟券連発シリーズ”になることがあるのも、”淡水プール引き波発生水面”の怖いところでしょう。
一方で、これはボートレース住之江の公式がピックアップするポイントでもあるのですが、出目「1-2-3」のオーソドックス決着率が全国平均よりかなり高くなっています。
「1-2-3」はいかにも競艇(ボート)らしい買い目ということで、この競技を知らない方でもなんとなくイメージがつくパターンも多いもの。故・アントニオ猪木さんの「1、2、3、ダーッ!」を連想させるということで、競艇時代から1-2-3はイノキとも呼ばれてきました。「イノキが出やすい住之江」と言い換えると、どこか可笑しみがありますね。
そんな住之江の1着率は、例年夏が低くて冬が高い傾向にあるのですが、今年も概ねいつもどおりの夏の数字に収まりつつあるようです。直近3ヶ月の1コース1着率は”59.4%”。そこに付け加えて、2コース2着率”26.5%”、3コース3着率”20.9%”が、2着および3着の各最高確率です。なるほど、これなら1-2-3が出やすいのも納得できます。
そこから外のコースになるにしたがって、2着率も3着率も有意に減少。もうどれだけ言われたかわからない、「ボートレースはインが強い」というセオリーどおりの展開が起きやすい。なんとも親しみやすい条件が整っている水面です。
舟券勝負がメインのファンにとって、ボートレース住之江は「ちゃんと予想して当てやすい水面」という”救世主”的な存在なのかもしれません。
まくり、差し、まくり差し。戦法も何を選んでも自由自在。オーソドックスなコースだからこそ、「良いスタートを決めて、良いターンをして、それぞれの瞬間で良い判断をくだそう」という基本中の基本がピッタリ当てはまる。それが住之江水面の特徴なのです。
高松宮記念2023(住之江競艇G1)のまとめ
今年もボートレースグランプリが行われる住之江で、そこでの活躍を占うかのようなメンバーによる初秋決戦。勝負の季節の到来を告げるにふさわしい、ハイレベルな開催になるでしょう。
また、賞金ランキング上位の選手が出る信頼感はもちろんのこと、「グランプリ本戦シード枠の当落(ベスト6)」「グランプリ本戦の当落(ベスト18)」「グランプリシリーズ戦の当落(ベスト60)」を目指すための数字が明確になってくるこの時期だからこそ、いっそう”心”の面から楽しめるのです。
ボートレース住之江のアクセス
住所 | 大阪府大阪市住之江区泉1丁目1-71 |
電話番号 | 06-6685-5112 |
競艇の時代から「聖地」とさえ言われる、ボートレース住之江。その歴史は非常にユニークであり、前身の狭山競艇場が”経営難”や”狭山池の旱魃”を理由として閉場したため、大阪府大阪市住之江区に新設した経緯がありました。
戦後に始まった競艇(ボートレース)の歴史のなかで、閉場したのは愛知県半田市にあった半田競艇場と、南河内郡狭山町(現・大阪狭山市)にあった狭山競走場の2場だけです。現代からの通称で「狭山競艇場」とは呼ばれるものの、当時の正式名称は「狭山競走場」なあたり、時代を感じさせてくれます。
なお、愛知の半田競艇場については、先日の「トコタンキング決定戦2023(常滑競艇G1)」特集記事でも触れていますので、ぜひ合わせてお楽しみください。
電車(ニュートラム)でのアクセス
ボートレース住之江の最寄り駅は、大阪メトロ四つ橋線&南港ポートタウン線(ニュートラム)「住之江公園駅」です。しかも、本場までは考え方によっては「徒歩0分」。もちろん、実際には降車してから駅の中を歩かなければなりませんが、それでも徒歩約3分で本場に到着できます。
住之江公園駅の北改札2号(2番)出口が、ボートレース住之江への直結通路です。とにかく利便性が高いゆえに、今回のようなグレードレースの開催日はどうしても混雑するので、その点には気をつけましょう。
自動車でのアクセス
ボートレース住之江の最寄り出入り口(ハーフIC)は、阪神高速15号堺線「玉出出入口」、および阪神高速道路4号湾岸線「南港中出入口」です。いずれも降りてから10分強の走行で、本場へ到達できるでしょう。
ただし、事前に知っておくべきこととして、ボートレース住之江には「無料駐車場がありません」。都市型競艇場の代表格にして、全24場で一二を争う好立地ということもあって、周辺にある有料駐車場の利用が必要となります。
ことSG開催やG1開催といったビッグレースともなれば、徒歩数分圏内の有料駐車場はすぐ埋まることもしばしば。予約可能な駐車場の利用に加え、「少し遠い有料駐車場に駐めてから、電車移動に切り替える」などの柔軟なプラン選択も視野に入れたほうがいいでしょう。